フォーム営業は違法か|送信前に自分の運用を6つの層で判定する手順
最初に開いた記事は違法ではないと書き、次の記事は違反の疑いが濃いと書いている。法人向けにフォームから営業文を送る前に、正反対の答えを2つ受け取った状態です。
一律に違法とした条文は、この記事で参照した範囲では見つけられませんでした。実務で止まるのは、断りの通知を受けたあとの送信と、送信先がフォームのページに置いた断りの2つです。
要るのは3つめの断定ではなく、自分のリスト、通数、自動化、送信先のページを条文の層に上から当てる順序です。層は6つで、止まった層で何を直すかが決まります。
相手の窓口の側から送ってよい会社を選ぶ手順は、送信前に見る3箇所の側に置いてあります。
この記事の結論
- 「フォーム営業は違法か」に一つの答えは出ません。法律ごとに宛先と手段が違うので、送信前に自分の運用を6つの層に上から当てて判定します
- 特定電子メール法が対象にしているのは、同法第2条第1号の委任を受けた省令が定義に使う通信方式です。省令が挙げているのは2つで、フォームからの送信がそこに入るかを明言した公表資料には当たれませんでした
- 実務で止まるのは、断りの通知を受けたあとの送信と、送信先がフォームのページに置いた断りの2つです
- 特定電子メール法の罰則は、オプトイン規制(第3条第1項)の違反への直罰ではありません。総務省と消費者庁のパンフレットも、同意のない者への送信は命令の対象とし、罰則は命令に従わない場合と書き分けています
- 画像認証の迂回は、不正アクセス禁止法第2条第3項が定めるアクセス制御機能=符号を確認して制限を解除する仕組みに当たるかで当てます
フォーム営業が違法かで答えが割れるのは、法律ごとに「誰に向けた規定か」が違うから
宛先が分かれば、自分の運用に関係する層だけを残せます。
この記事を書くにあたって、「フォーム営業 違法」「フォーム営業 法律」「フォーム営業 罰則」「フォーム営業 自動送信」「問い合わせフォーム 営業 違法」で上位に出る記事を通読しました。
法律の射程は、宛先で切れます。同じ文を送っても、受け手が消費者か法人かで当たる条文が変わるからです。
分かりやすいのは景品表示法です。不当景品類及び不当表示防止法第1条は、法の目的を「一般消費者の利益を保護すること」に置いています。
同法第5条が禁じる表示の要件も、第1号が「一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し」、第2号が「取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」と書かれています。法人だけを宛先にした営業文は、この条文が想定している受け手と一致しません。
一方の特定電子メール法は、宛先ではなく手段の側で射程が決まります。特定電子メール法が対象にしているのは、総務省令が定義に使う通信方式です。
省令が挙げているのは、SMTPを用いる方式と、携帯端末に電話番号を用いて伝えるメッセージの2つでした。
この2つは、同法第2条第1号が「総務省令で定める通信方式を用いるものをいう」と書き、平成21年総務省令第85号が具体の方式を挙げている形で決まっています。フォームからの送信を対象に含めた公表資料も、対象外だと明言した公表資料も見つけられませんでした。
目的の側も、消費者の保護とは書かれていません。総務省と消費者庁が出している『特定電子メール法のポイント』(2018年7月)は、同法の目的を「電子メールの送受信上の支障の防止」と置いた表を載せています。
送る側の属性でも切れます。同じパンフレットは「非営利団体や営業を営まない個人が送信する電子メールは対象外です」としていて、営業として送る読者はここでは外れません。
規制がかかる文の中身も、条文の側に書かれています。第2条第2号は「特定電子メール」を「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メール」と定義しており、他人の営業のための送信もここに入ります。
名前が挙がる法律は、ほかに2つあります。特定商取引法の電子メール広告規制は、第26条第1項第1号が「営業のために若しくは営業として締結するもの」を適用除外に挙げているため、法人が営業として結ぶ契約を前提にした送信とは射程が重なりません。
個人情報保護法は、受け取った側の扱いにも関わります。第18条第1項は、あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならないと定めています。
フォームに入力した担当者名やアドレスは、受け取った会社の個人情報です。どう扱われるかは、送る側が決められる範囲にありません。
まず、自分に関係する層だけを残しましょう。法人だけに送るなら、ここから当てるのは特定電子メール法の4つの層、刑法と不正アクセス禁止法の要件、そして送信先が置いた規約です。
リストに個人や個人事業主が混ざるときは、見る法律が変わる
送り先に個人や個人事業主が混ざると、見る法律が1つ増えます。特定電子メール法の射程は手段の側で切れますが、特定商取引法はそこで切れないからです。
総務省と消費者庁の『特定電子メール法のポイント』(2018年7月)には、「通信販売などの電子メール広告を個人に対して行う場合には、特定商取引法の適用があります。」と書かれています。個人を宛先にした通信販売の電子メール広告は、特定商取引法の側で規制されています。
特商法の「電子メール広告」の定義は、通信方式を限定していません。第12条の3第1項が書いているのは「当該広告に係る通信文その他の情報を電磁的方法により送信し、これを当該広告の相手方の使用に係る電子計算機の映像面に表示されるようにする方法により行う広告」です。
切れるのは手段ではなく、相手と契約の側でした。適用除外に挙がっているのは「営業のために若しくは営業として締結するもの」なので、法人が営業として結ぶ契約を前提にした送信はここで外れます。
個人事業主の行は、どちらにも寄ります。公表アドレスの例外を定めた第3条第1項第4号は「個人にあっては、営業を営む者に限る」と書いているので、営業を営む個人事業主が公表しているアドレスはこの例外に入り得ます。
リストを作る段階で、法人の行と個人・個人事業主の行を分けておきましょう。屋号だけで判断がつかない行は、法人番号が取れるかどうかで仮に振り分け、残った行は送信前に相手のサイトで確認してください。
特定電子メール法でフォーム営業が止まるのは、定義ではなく「断られたあと」
止まるのは定義の層ではなく、断りの通知を受けたあとの送信です。同法が定めているのは、2方式で送る広告宣伝メールの送り方で、定義の層はその入口にすぎません。
特定電子メール法の第1層から第3層:定義と、公表アドレスの例外がどこで外れるか
第1層は定義です。特定電子メール法が対象にしているのは、同法第2条第1号と平成21年総務省令第85号が定義に使う通信方式で、省令が挙げているのはSMTPと携帯端末の電話番号によるメッセージの2つです。
この読み方は、行政の側が置いたものです。総務省の研究会に出された資料「省令で定める内容についての考え方について」も、現行省令の通信方式を「SMTP及びSMS」と呼び、新しい方式を対象にするには省令での明確化が必要だとしていました。
第2層は、送る文の中身です。迷惑メール対策推進協議会『迷惑メール白書 2022-2024』(2024年8月)も、規制の対象を「主として、広告宣伝を行うための電子メール」としており、営業の案内はここに入ります。
リストにメールアドレスの列が無いなら、この第3層と次の節は飛ばして第4層へ進んでください。ここで見る例外は、アドレスを持っている行にだけ当たります。
第3層は、同意の例外です。第3条第1項は掲げられた者以外への送信を禁じたうえで、第4号で自己の電子メールアドレスを公表している団体を例外に挙げています。
ただし、公表の中身は施行規則第3条のただし書きで絞られています。アドレスと併せて送信しないよう求める文言を掲げたページは、公表に当たりません。
同じことが、総務省と消費者庁のパンフレットにも書かれています。「自己の電子メールアドレスの公表と併せて、広告宣伝メールの送信をしないように求める旨が公表されている場合は、同意なく送信することはできません。」とあり、条文と行政の説明は同じ向きでした。
フォームだけを置いてアドレスを載せていない会社には、この第4号がそのまま当てはまりません。
この第3層には、行政の側が置いた肯定材料があります。総務省と消費者庁の『特定電子メールの送信等に関するガイドライン』(平成23年8月)で、オプトインの例外を説明した箇所です。
ガイドラインが書いているのは、「正当な営業活動の一環として」事業者間で送る場合の話です。メールアドレスを公開している事業者にビジネス向けサービス・製品の広告・宣伝メールを送ることは「実態的に行われており」、「ビジネス慣習上も一定の範囲で認められているものと考えられる」とあります。
認められているのは「一定の範囲」までです。
例外が置かれた理由も、同じ箇所に出てきます。アドレスの公表は「基本的に、電子メールを受け取るために行われるものである」という前提に立っています。
取引関係と、書面でアドレスを受け取っている相手(特定電子メール法のもう2つの例外)
取引関係にある相手と、名刺でアドレスを受け取った相手は、特定電子メール法のオプトイン規制の例外として、条文と公的文書の側に挙がっています。同法が対象にしているのは2方式の電子メールで、ここで見るのはその中の例外です。
総務省と消費者庁のパンフレットが挙げているのは、「取引関係にある者に送信する場合」と「名刺などの書面により自己の電子メールアドレスを通知した者に対して送信する場合」です。どちらも第3条第1項の例外で、第4号の公表アドレスとは別の号になります。
要件は「書面により」の部分です。施行規則第2条は、この通知の方法を「書面により通知する方法とする」と定めているので、口頭で聞いたアドレスやウェブで拾ったアドレスは、この号では扱えません。
名刺がこの「書面」に当たるかは、事実関係によります。手元のリストでは、名刺で受け取った行と、ウェブで拾った行を分けて管理してください。
記録の話も、この号に付いてきます。求めや同意の通知を受けて送る相手がいるなら、その記録の保存を課しているのは法第3条第2項で、条文は保存義務を負う者を「前項第一号の通知を受けた者」と書いています。
保存期間も、同じパンフレットに書かれています。「記録の保存に係る広告宣伝メールを最後に送信した日から1ヶ月」で、措置命令を受けた場合は1年間です。
施行規則第4条第2項も「当該送信を最後にした日から起算して一月を経過する日までの間」と定めていて、長さは行政の説明と同じでした。
この1ヶ月は、通知を受けた相手についての期間です。公表しているアドレス宛ての送信一般に当てる期間ではありません。
第4層:断りの通知を受けたあとは、特定電子メール法第3条第3項の側で止まる
6つの層のうち4つめ、断りの通知を受けたあとの送信が、運用でいちばん止まる層です。特定電子メール法第3条第3項は「その通知に示された意思に反して、特定電子メールの送信をしてはならない」と書いており、ここから先は条文の側で止まります。
ここで1つ分けておきます。同法が対象にしているのは2方式なので、フォームからの送信が第3条第3項の違反に当たるとは、この記事では書けません。
それでも第4層は、この記事では当てる側に置きます。射程に入るかどうかを示した公表資料に当たれていないので、この記事は入る前提で止める立場を取ります。
判定が必要な段階では、行政に照会する手もあります。総務省行政管理局の法令適用事前確認手続は、自分の具体的な行為が「特定の法令の規定の適用対象となるかどうか」を所管の行政機関に確認できる制度です。
回答は公表されます。総務省が出している対象条項の一覧(2026年7月末時点)には、同法の条項も載っています。
通知の方法は、条文の側で特定の様式に絞られていません。施行規則第5条は、送信しないよう求めるアドレスを明らかにして「電子メールの送信その他の任意の方法によって行う方法」とすると書いています。
フォームへの返信で「今後は送らないでください」と届いた連絡も、この層に入り得るものです。総務省と消費者庁のパンフレット(2018年7月)の罰則の欄にも「受信拒否者への送信」が並んでいて、断りを無視した送信は行政の命令の対象として扱われています。
受けた連絡の残し方と再送の間隔は、送ったあとの設計の側に置いてあります。
断ったあとにも送れる例外は、狭く書かれています。施行規則第6条第3号が挙げているのは「広告又は宣伝以外の行為を主たる目的として送信される電子メール(電子メールの受信をする者の意思に反することなく送信されるものに限る。)において広告又は宣伝が付随的に行われる場合」です。
条件は「意思に反することなく」の部分です。断られた相手に、事務連絡の体裁で営業の案内を混ぜる使い方は、この条件と合いません。
送信前に見るのは、断りが「どの語で」「どこに」書かれているかです。総務省と消費者庁の『特定電子メールの送信等に関するガイドライン』(平成23年8月)は、拒否の表示として「明確に拒否する旨の意思表示であることが判る用語」を求めたうえで、語の組み合わせを例示しています。
- 語の組み合わせ … 「特定電子メール」「広告メール」「宣伝メール」「迷惑メール」のいずれかと、「拒否」「お断り」「送信しない」のいずれかを組み合わせたもの
- 表示される場所 … ガイドラインが適当としているのは「電子メールアドレスの直前又は直後など公表する電子メールアドレスと併せて表示する」こと
この組み合わせが載っている会社は、第3層の例外から外れます。自分のリストで、アドレス欄の前後にこの語が入っている行を抜いてください。
ここで見ているのは、公表されたメールアドレスに併記された表示です。フォームのページ自体に置かれた断りは別の層で、第6層として当てます。
残す記録は、3項目で足ります。あとから経過を説明できる形にしておくのが目的です。
- 送信日時と、同じ相手への送信の間隔
- 断りを受けた日と、受けた方法(パンフレットも、通知の有無で争いになることを避けるため「その記録を保存するようにしてください」と書いています)
- 求めや同意の通知を受けて送る相手がいる場合は、その通知の記録(保存期間は最後に送信した日から1ヶ月、措置命令を受けた場合は1年間)
この3項目を、送信リストと同じ場所に列として足しましょう。別の台帳に分けると、次にリストを作り直すときに参照されません。
フォーム営業の罰則を調べると、特定電子メール法では罰金より先に措置命令が来る
検索上位の解説でよく見かけるのは「違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金」という説明です。ところが特定電子メール法は、第3条第1項に違反したこと自体を罰する形になっていません。
罰則は、行政の命令に違反したときに結び付きます。
この法律が対象としているのは2方式の電子メールです。
第7条で命じられるのは「電子メールの送信の方法の改善に関し必要な措置」で、罰金を課す条文ではありません。行政が動くのは、第3条や第4条の規定を遵守していないと認める場合で、かつ電子メールの送受信上の支障を防止するため必要があると認めるときです。
条文が見ている場面には、「一時に多数の者に対してする特定電子メールの送信」という言い方が出てきます。通数の線は書かれていませんが、多数に向けて送っている状態がこの条文の視野に入ることは読めます。
罰則の条文は第34条で、罰するのは第5条に違反した場合と、第7条の命令に違反した場合です。法定刑は「一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」で、2026年10月時点の条文は「懲役」ではなく拘禁刑と書かれています。
法人に対する罰金を定めた第37条第1号も、第34条に当たる行為があったときの規定でした。
命令が先に来ることは、総務省の文書にも書き分けられている
命令が先、罰則は命令に従わない場合という順番は、総務省自身の文書でも同じ書き分けになっています。
『特定電子メール法のポイント』は、罰則をまとめた欄に「同意のない者への送信」を置いています。そこに最初に書かれているのは「総務大臣及び内閣総理大臣による命令(架空電子メールアドレスあての送信の場合は、総務大臣による命令)。」でした。
罰則が出てくるのは、その次です。同じ欄は「命令に従わない場合」という条件を付けて罰則を書いており、違反そのものに罰則を結び付けていません。
このパンフレットの発行は2018年7月で、刑の名前も当時の表記のままです。現行の第34条が「一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」と書いているので、法定刑の文言はそちらで見てください。
同法が対象にしているのは2方式の電子メールのままで、この書き分けはその中の話です。
情報提供を受ける窓口の側も、同じ順番で動いています。日本データ通信協会の迷惑メール相談センターは「みなさまからお寄せいただきました違反メール情報により、総務省および消費者庁において電子メールの送信の方法の改善を命じる措置命令が行われています。」と書いていて、情報提供から出てくるのは方法の改善の命令です。
罰則が適用されたと公表されている記録は2種類(公表された集計は2014年まで)
罰則が適用されたと公表されている記録は、2種類に限られていました。迷惑メール相談センターが出している「特定電子メール法の罰則の適用状況」に並んでいるのは、第5条の送信者情報の偽装と、第7条に基づく措置命令への違反です。
オプトイン規制そのもので罰則が適用された記録は、この表に載っていません。措置命令への違反として件数が入っているのは2014年の2件です。
ただし、この表が公表している集計は2014年までで、それ以降を集計した資料には当たれませんでした。
ここで数えられているのはメールとSMSの件数で、フォームからの送信を対象にした集計ではありません。
この表を載せているライブラリは、2014年の国際会合(London Action Plan 第10回会合)を機に作られたものです。
命令の側も、一覧では追えません。同センターは「一定期間経過した行政処分実施状況は削除しているため、恐れ入りますが、総務省へお問い合わせください。」と書いています。
そのうえで、総務省の報道資料でこの記事が当たれたのは3件で、いずれも法第7条に基づく措置命令でした。3件はいずれも平成27年から平成30年(2015年から2018年)の公表で、それ以降の公表事例には当たれていません。
内訳は、平成27年9月の株式会社フィーズ、平成29年11月の株式会社ライトニング、平成30年3月の株式会社MOTHERです。2件目の事案では、受信者の同意を得ておらず第3条第1項の規定に違反する行為を行っていた事実が認められ、1件目と3件目では第3条第1項に加えて第4条(表示義務)の遵守も命じられています。
ただし3件とも、命令を受けた会社が自ら運営するウェブサイトの広告・宣伝メールを、同意を得ていない受信者に送った事案です。フォーム経由の送信を扱った措置命令は、この記事で当たれた範囲では見つけられませんでした。
直す先は、罰金の額ではなく送信の方法です。第7条が命じるのは方法の改善なので、断りを受けた相手を外す手順と、送信の記録を残す形を先に整えましょう。
フォーム営業の自動送信と画像認証は、どの要件で線が引かれるか
線はツールの有無ではなく、要件の側にあります。自動で送ること自体を禁じた条文は、この記事で参照した範囲では見つけられませんでした。
自動化の度合いも、条文の側では区別されていません。下に挙げる2つの条文は、どちらも手段と結果で要件を書いていて、AIに宛先や文面を選ばせたかどうかで要件が変わる書き方にはなっていません。
見るのは2つの条文です。1つは刑法第234条の2で、「電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した」ことが要件です。
もう1つは刑法第233条の偽計業務妨害で、こちらは「偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した」ことが要件になります。どちらも、手段と妨害の結果の両方が書かれています。
誰の行為として評価されるかは、事実関係によります。判断が要る段階では、送信した日時の記録、送った文面、送信先ページを保存したものの3点を持って、弁護士に確認してください。
画像認証の迂回は、別の法律の要件で見ます。不正アクセス禁止法が禁じる行為は第2条第4項に限定列挙されており、第2号は「特定利用の制限を免れることができる情報」や指令を入力して作動させる行為です。
ここでいう制限は、同法が定める「アクセス制御機能」を前提にしています。誰でも開けるフォームを開いて送る行為が、この限定列挙のどれに当たるかを書いた公表資料は見つけられませんでした。
当てる軸は、その「アクセス制御機能」の定義の側にあります。第2条第3項は、入力された符号がその利用に係る「識別符号」であることを確認して「当該特定利用の制限の全部又は一部を解除するものをいう」と書いています。
もう1つ見るのは、識別符号の定義です。第2条第2項第1号が挙げているのは「当該アクセス管理者によってその内容をみだりに第三者に知らせてはならないものとされている符号」です。
画像認証に出る文字や絵がこれに当たるかは、この定義に照らして見てください。
ここには、条文とは別の層もあります。Googleの利用規約(発効日2026年7月30日)は、禁止する行為の例として「システムや保護対策に対するスパム行為、ハッキング、または回避」を挙げています。
画像認証が不正アクセス禁止法の要件に当たるかどうかとは別に、提供元の規約の側に線が引かれています。使っているツールが画像認証に何をしているかは、提供元に書面で確認してください。
経過の分かる事例も1つ見ておきます。2010年に起きた岡崎市立中央図書館の事例は、公開されているウェブページへの自動アクセスで、フォーム営業の事例ではありません。
経過を解説しているのは、講演当時に京都大学に在籍していた上原哲太郎氏のJANOGでの資料です。
この事例では、プログラムを書いた人が偽計業務妨害で逮捕され、22日間の勾留の後に起訴猶予処分となっています。アクセスしていた側のプログラムは「シリアルアクセス、1リクエスト/秒に調整」されていました。
速度を抑えていても、刑事手続に乗った経過があります。
手元で効いてくるのは、送信先のフォームの作りです。
スマートカイタクが2026年7〜8月に企業単位で約40万社のフォームを数えた集計(2026年9月12日取得)では、利用者が操作して答える対話型の画像認証を備えていた企業は7.8%でした。
自分で送る場合、画像認証を迂回しない前提なら、この7.8%は人が1件ずつ解くことになります。送る件数の分だけ人の手が要るので、見積もりに入れておきましょう。
通数と速度の基準も探しました。条文、ガイドライン、白書、公表された措置命令のいずれにも、1社あたりの通数や送信の速度を示した基準は見つけられませんでした。
基準がない層は、記録で埋めます。
フォーム営業には法令の外にもう1つ層がある:送信先が置いた「フォーム利用規約」
6つめの層は、送信先が自分のフォームに置いた条件です。違法かどうかとは別に、相手が送るなと書いていれば、そこは送らない相手になります。
実物があります。弁護士法人GT法律事務所のお問い合わせフォーム利用規約は、「勧誘や営業活動を行い、その他お問い合わせの趣旨を逸脱した目的にお問い合わせフォームを利用する行為」を固くお断りすると書いています。
ほぼ同じ文言の規約ページが、小澤英明法律事務所にもありました。2件とも法律事務所で、同じ雛形と見える文言です。
ただし、規約の別ページを追う作業は、実務ではほとんど増えませんでした。スマートカイタクが同じ294社を開いて数えたところ、利用規約・注意事項の別ページへのリンクがあったのは13.3%でした。
リンクがあった39社のうち、取得できた38社を開いて数えると、フォームのページに書かれていない営業お断りの記載は0社でした。294社を開いた結果であって、別ページを追わなくてよいという保証ではありません。
断りは、フォームのページ本体に出ます。同じ294社で、営業お断りの文章があったのは6.1%(18社)、およそ16社に1社でした。
ただし、この18社のうち1社は「[営業電話お断り]」とだけ書いていて、断っているのは電話でした。6.1%はフォームが対象とは限らないので、見つけた断りが何を断っているかまで読んでください。
同じ294社で実際に書かれていた文面です。自分のリストで同じ言い方を探すときの、当てる語になります。
- 「本フォームを使っての営業は一切お断りいたします」
- 「営業メールのお問合せフォーム利用を固くお断り致します」
- 「※セールス・勧誘、及び面談や商談アポイント依頼のメールは固くお断りします(送信いただいても対応いたしかねます)」
- 「※勧誘・M&A・資本提携・人材紹介営業に関するご連絡はご遠慮ください」
やることは1つです。送信の直前にフォームのページを1枚開き、営業お断りの記載を読んでから押しましょう。
営業お断りの記載は、法律事務所以外のページにもある
フォームのページに置かれた営業お断りの記載は、法律事務所だけのものではありません。業界団体のお問い合わせページにも、同じ形の断りが置かれています。
日本商工会議所のお問い合わせページには「お問い合わせにあたってのご注意事項」が並んでいて、その1つが「営業・勧誘・訪問アポイント等は固くお断りいたします。」です。同じ注意事項には「ご意見・ご要望に対しては、個別の回答を差し上げておりません。あらかじめご了承ください。」も書かれていました。
置かれている場所に意味があります。どちらもフォームに入る手前の注意事項で、送信する前に読める位置です。
実例が3件(法律事務所2件と業界団体1件)そろっても、言えるのは実在するところまでです。業種をまたいで広く置かれているかどうかは、この3件からは分かりません。
当てる語は、実測で拾った文面と合わせて見てください。〈営業/セールス/勧誘/売り込み〉のいずれかと〈お断り/ご遠慮/禁止/お控え/対応しておりません〉のいずれかが同じ一文の中に出ていたら、その会社は送らない相手です。
「営業目的で送信したら◯万円請求します」と書かれていた場合
その記載を見つけたら、送らずに外すのがいちばん早い解決です。払う義務があるかどうかは、送ってしまったあとに争う話になるからです。
請求の根拠は、契約が成立しているかどうかから見ます。民法第522条第1項が成立の条件に置いているのは、申込みに対して「相手方が承諾をしたとき」で、ページに記載を置いたこと自体は条件に挙がっていません。
定型約款の側にも制限があります。民法第548条の2は、相手方の義務を加重してその利益を一方的に害すると認められる条項について、同条第2項で「合意をしなかったものとみなす」と定めています。
ただし、この条文で請求の当否を判断した裁判例には当たれませんでした。払う義務があるかどうかは、個別の事実関係によります。
請求が、損害の賠償として届くこともあります。民法第709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者」に賠償責任を負わせる条文で、侵害と損害の両方が要件です。
違法かどうかと、賠償が立つかどうかは別の層です。請求書が届いたあとに何をそろえるかは、請求が届いた日の手順の側に置いてあります。
送信前にフォーム営業の6つの層を上から当てる(判定手順)
この表を全部通しても、「送っていい」という許可は出ません。第1層からして、特定電子メール法が対象にしているのは省令が挙げる通信方式で、フォームからの送信がそこに入るかを明言した公表資料に当たれていないからです。
使い方は単純です。どの層でも止まらなければ送る、止まったらその層の「止まったときにやること」を済ませてから送ってください。
| 層 | 判定する問い | 止まったときにやること |
|---|---|---|
| 1. 宛先と手段(特定電子メール法の定義) | 送り先は法人か。使う手段は何か(同法第2条第1号+平成21年総務省令第85号の2方式か) | 消費者が混ざるなら法人向けと分け、個人・個人事業主の行は特定商取引法の側まで戻って確認する |
| 2. 広告・宣伝かどうか | 送る文は、営業の広告・宣伝を行う手段か(同法第2条第2号) | 事務連絡の体裁でも、広告宣伝のサイトへ誘導していれば広告宣伝として当てる |
| 3. 公表アドレスの例外と、別の号の例外 | リストにメールアドレスがある行で、アドレスと併せて断りの語が載っていないか(同法施行規則第3条ただし書き)。取引関係にある相手か、名刺などの書面でアドレスを受け取った相手か | 断りの語がある会社をリストから抜く。取引関係と書面の相手は、別の号の例外として分けて管理する |
| 4. 断りの通知 | その相手から送るなという連絡を受けていないか(同法第3条第3項) | 次にリストを作るときにも残らない場所へ登録し、受けた日と方法を記録する |
| 5. 自動化 | 使っているツールが画像認証に何をしているかを、提供元に書面で確認したか。同じ相手への送信日時を記録しているか | 回答が取れるまで画像認証のあるフォームへの送信を止める。送信日時と送信の間隔を記録に残す |
| 6. 送信先の規約 | フォームのページに営業お断りや「営業目的の送信には◯万円を請求します」の記載がないか。あるなら何を断っているか | 送らない。除外リストにドメインで1行足す |
6つのうち、送信先1件ごとに当て直すのは第6層です。フォームのページを1枚開けば、営業お断りの記載も、画像認証があるかどうかも、その場で分かります。
残りの5つは、リストの列と、ツールの提供元から取った回答で判定できます。
1件の判定に開くページ数も数えました。スマートカイタクが同じ294社を開いて数えた実測です。
フォームのページ本体が1ページ/件、規約・注意事項の別ページは0ページ/件で、別ページを開かないと断りが分からなかった企業は0社でした。
リストの件数に掛ければ、作業量が出ます。同じ294社で営業お断りの文章があったのは6.1%なので、1,000件のリストなら1,000枚のページを開き、単純比例では断りが見つかるのは約61件です。
見つけた分は、除外リストに移します。断っているのが電話だけの会社も混ざるので、1件ずつ何を断っているかを読んでから分けてください。
除外のキーは、社名ではなくドメインにしてください。スマートカイタクがフォームURLを取得できた企業を母数に数えた集計(2026年8月時点)では、同じ社名の法人が他にもいる企業は15.0%、およそ7社に1社でした。
この表を、自社の送信手順に写しましょう。層の番号と「止まったときにやること」の列だけでも、送信前の確認が1本の手順になります。
よくある質問
結局、フォーム営業は違法なのですか
問い合わせフォームからの営業が違法かどうかを一律に定めた条文は、この記事で参照した範囲では見つけられませんでした。実務で止まるのは、断りの通知を受けたあとの送信と、送信先がフォームのページに置いた断りの2つです。
答えが割れるのは、法律ごとに宛先と手段が違うからです。特定電子メール法第2条第1号の委任を受けた省令は、定義に使う通信方式を定めた文書で、フォームからの送信が対象かどうかを判断した文書ではありません。
個別の事案がどう判断されるかは、事実関係によります。まず整えるのは、断りを受けた相手を外す手順と、送信した日時の記録です。
罰金や拘禁刑はいきなり来るのですか
特定電子メール法の罰則は、いきなりは来ません。総務省と消費者庁のパンフレットは、同意のない者への送信や受信拒否者への送信を命令の欄に置き、罰則のほうは「命令に従わない場合」という条件を付けて書いています。
罰則が適用されたと公表されている記録も、日本データ通信協会 迷惑メール相談センターの「特定電子メール法の罰則の適用状況」に載っている2種類でした。第5条の送信者情報の偽装と、措置命令への違反です。
同法が対象にしているのは2方式の電子メールで、この表はフォームからの送信を対象にした集計ではありません。公表されている集計は2014年までで、それ以降を集計した資料には当たれませんでした。
自動送信ツールやAIで送るのは違法ですか
ツールの使用そのものを禁じた条文は、この記事で参照した範囲では見つけられませんでした。線が引かれるのは、刑法第234条の2の要件と、不正アクセス禁止法第2条第4項の限定列挙に当たるかどうかです。
特定電子メール法が対象にしているのは2方式ですが、同法上の判定も使う側に残ります。総務省と消費者庁の『特定電子メールの送信等に関するガイドライン』(平成23年8月)は、同法の「送信者」を電子メールを発信する操作の主体となる者と説明しています。
自らは発信の操作をせず、システムを提供しているだけのメール配信サービス事業者・配信ASPは、これに当たらないとされています。
1社に何通までなら送っていいのですか
通数の上限を示した基準は、条文、総務省と消費者庁のガイドライン(平成23年8月)、迷惑メール白書(2024年8月)、公表された措置命令のいずれにも見つけられませんでした。上限の数字を探しても、公表資料の側には出てきません。
条文に出てくるのは「一時に多数の者に対してする」という言い方だけで、通数は書かれていません。特定電子メール法が対象にしているのは2方式のままで、通数の線を引いた記載も見当たりません。
「営業目的の送信には◯万円を請求します」と書かれたフォームに送ってしまいました
まず、請求の根拠を確かめてください。民法第522条第1項は、契約が申込みと承諾で成立すると定めていて、ページの記載がそのまま合意になるとは書かれていません。
定型約款の条項にも制限があります。相手方の義務を加重し、利益を一方的に害すると認められる条項は「合意をしなかったものとみなす」と民法第548条の2に書かれています。
ただし、支払義務があるかどうかを判断した裁判例には当たれませんでした。先に手元へ残すのは、送信した日時と回数、送ったときの画面、そのページに書かれていた断りの文言の3点です。
支払うかどうかの判断が要る段階に入ったら、そろえた材料を持って弁護士に確認してください。
リストを機械で集めるのは違法ですか
この記事では判定していません。6つの層は送る側の判定で、集める側は別の判定になるため、送信の判定が通っても集め方の判定が通るとは限りません。
集め方の線引きは、リストを送れる形にするまでの手順の側に置いてあります。
まとめ:この判定を毎回・全件に当て続けられるか
残るのは、6つの層を毎回・全件に当て続けられるかどうかです。
自分でやるなら:年に何枚のフォームページを開き直すか
分かれ目は、1年で何枚のフォームページを開き直すかです。判定は1件につき1枚で済むので、送る件数に年間の回数を掛けた枚数が、そのまま1年の作業量になります。
数十社に今回だけ送るなら、手作業で足ります。開くのは数十枚で、除外リストも1枚の表に収まる規模です。
四半期ごとに数百社へ送るなら、年間では千枚単位になります。
判定の次には、送信そのものの手数が来ます。スマートカイタクが送信を完了した約18万社を1社1行で数えた集計(2026年10月7日取得)では、1社のフォームに入力した欄は平均7〜8欄で、10欄以上あったのは24.0%、およそ4社に1社でした。
値を入れた欄だけを数えているので、同意のチェックや選択式の分類は入っていません。人が実際に触る欄数の下限に近い数字として見てください。
自分でやると決めたら、最初の作業は除外リストの置き場所を決めることです。断りの連絡と「営業お断り」の記載を、ドメインをキーにした1つの表へ集めましょう。
リストの列と除外の作り方は、12列の決め方の側に置いてあります。何件送れば自分の数字が読めるかは、反応率を判定できる件数の側です。
自作の人件費と代行の料金を同じ分母で比べる手順は、1商談あたりで比べる計算の側です。
任せるなら:仕組みで肩代わりする層
年に千枚単位でフォームのページを開き直すことになるなら、任せるという選択肢もあります。スマートカイタクは問い合わせフォーム営業の代行で、「営業お断り」の記載があるフォームは検知して送信対象から除外します。
重なる送信も仕組みで止めます。一度送信した企業には1ヶ月間は再送信せず、送信は日中のみで、深夜・早朝には送りません。
月額プランでは、受け取った側が自分で配信を止められるリンクを付け、停止した企業を以降のリストからも外します。既存の取引先や競合など、送信を避けたい企業は事前に登録できます。
配信の設定は担当者が行い、送信だけをシステムが実行します。完全自動のツールではなく、成果保証もしていません。
問い合わせのときに伝えるのは、リストを絞り込む条件(対象顧客・業種・従業員数・設立年・地域・データソース元)と、送信を避けたい会社の一覧です。条件が決まっているなら、スマートカイタクに問い合わせたうえで、契約して入金し、営業文を渡すところまで進めば配信が始まります。
今日やることは2つです。6つの層の表を自社の送信手順に写し、除外リストの置き場所を決めてください。